太宰治ちゃまといえば、最近やっと母親から借りた太宰治集を読破した。
晩年の「道化の華」と「「畜犬談」、「女の決闘」が凄い。

「人は、念々と動く心の像すべてを真実と見なしてはいけません。自分のものでも無い或る卑しい壮年を、自分の生まれつきの本性の如く謝って思い込み、悶々している気弱い人が、ずいぶん多い様子であります。卑しい願望が、ちらと胸に浮かぶことは、誰にだってあります。時々刻々、美醜さまざまの想念が、胸に浮かんでは消え、浮かんでは消えて、そうして人は生きています。その場合に、醜いものだけを正体として信じ、美しい願望も人間には在るという事を忘れているのは、間違いであります。念々と動く心の像は、すべて「事実」そして存在はしても、けれども、それを「真実」として指摘するのは間違いなのであります。真実は、常に一つではありませんか。他は、すべて信じなくていいのです。忘れていていいのです。

と書いた後に、
「何も人助けの為であります。慈善は、私の本性かも知れません。『醜いものだけを正体として信じ、美しい願望も人間には在るということを忘れているのは、間違いであります。』とD先生が教えております。何事も、自分を、善いほうに解釈して置くのがいいようだ。さて、...女の決闘//太宰治
と書かれているのだ。太宰治ちゃま。このユーモア。太宰治
この太宰治の本を私は母親の本棚で見つけたのだけど、これはちょっとした事件だった。
この本にはちょこちょこ殴り書きがしてある。そんなこと、私の知ってる母なら絶対にしないことだ。しかもその殴り書きのなんと恐ろしいこと。
「自分の中の悪をエゴイズムを道徳を打たねばならぬ、自己を破壊せねば」
とか、他にもあるが私はそれをここに書いていいはずがない。この一行ですら書いてはならぬ、が。エゴだ。
人間のこころをずっとずっと奥深く潜って行くと、そこには一筋の光もない真っ暗な場所がるのかもしれない。深海のような、音もなく光もないそんな場所。地獄の黙示録の原作であるthe heart of darkness.この本も一度読んでみたい。



あ、遅刻しそ。
そろそろ行ってきます。

聞いた音楽:働く男//ユニコーン