エピソード

約一ヶ月前の、兄ちゃんの結婚式前夜の話し。家族四人で楽しく夕食に寿司を食べ、帰宅した午後10時頃。「婚姻届の保証人の欄には、アサコ(お嫁さんの仮名)の父さんが署名してあるから、父ちゃんも保証人のとこ書いて」と兄ちゃんが頼んだ。「アサコの父さんの真似して、同じ様な書き方で書いて」と。父ちゃんはどれどれと言って老眼鏡を掛け、テーブルの端で書き始めた。しばらく経って書き終わり、母さんがそれ手に取って老眼鏡を掛けそれを見ていた、そして、「あんたこれ間違ってるよ!」と言った。覗き込んで見ると、はっきり覚えていないが、何丁目とか何番地とかの記入が間違ってされていて、しかも訂正しにくい感じの間違い方だった。数時間後に提出する予定の、大事な婚姻届に間違って署名しちゃったよー!と一瞬で部屋の空気が嫌なものに変わった。その時私は父ちゃんの字の汚さにもちょっとビビった。貧弱〜な字だった、いつもの父ちゃんの字ではなかった。父ちゃんはカッとなって怒り出した。「アサコの父ちゃんのと同じ様に書けって言っただろっっ!!!!」と大声で怒鳴った。私達三人はいきなり大声で怒鳴りだした父ちゃんをきょとんとした顔で見つつ、そんなに怒らなくても...的な感じの空気になり、「でもちゃんと見れば、違うって分かるでしょ。」とか誰かが言った。父ちゃんは更に怒って、「見えにくかったのにな!!!」とまた怒鳴ってから最後には、「あんたなんか(あんた達)が書ばいいさ!!!」と言い出した。まあ既に書いてしまった事だし、訂正出来るだろうって事で、大丈夫だからそんなに怒るなって、的な事を兄ちゃんが言ってまあどうにか納まった。その後は、今でははっきり思い出せないが、なんだかんだで徐々に嫌な空気もなくなり、兄ちゃんの祝辞の予行演習したり、風呂場で兄ちゃんが仕事様のハサミで、父ちゃん母さんの髪を切ったりしていた。その夜は、「家族四人で眠って、当日はみんなで揃って家を出て、式場へ向かおう。」と父ちゃんが言っていたけど、兄ちゃん達はまだ準備が終わってないらしく、アサコさんの待つ同棲中のアパートへ行かないとと言う、それで私が兄ちゃんを車で送ることになった。いよいよ明日が結婚式だね、緊張するねとか話しながら何分か車を走らせた頃、そういえば父ちゃんが怒ったねという話しになった時に兄ちゃんが言った、「あれ、部屋の電気を替えてなかったからだよ、言っただろ電気替えとけって。あれは電気が悪いよ。」と。私の部屋は、一枚の壁を隔てて二部屋の造りになっていたのを、壁を取っ払って一つの部屋にしてある、で、片方の部屋の電気が切れていたのだが、なんだかんだで変えずにそのままにしていた。それで特に不便ではなかった。その兄ちゃんの言葉は衝撃だった、息子の結婚式前夜にあんなに怒る父ちゃん格好悪いとだけ私は考えていた。そういう発想が全く、カケラもなかった。喧嘩の原因はいろいろあると思うけど、案外日常のそーゆーのが関係してるのかもしれないと思った。きちんと暮らす、とはとあるブログのタイトルだけど、とても心に染みる言葉なのでありました。妙に印象に残ってる、兄ちゃんの結婚式前夜のエピソード。