高校の授業で「こころ」を読んで読書観が一変した。こころを読んで衝撃がはしった。恐ろしいものを目にしてしまったという興奮があった。そしてその時初めて自殺というものを想像の中で見た。障子に飛び散った血潮を私の脳はしっかり映した。それまでの私の記憶に残る読書体験と言えば、小学生の時に忠犬ハチ公フランダースの犬を読んで「ひどいー!かなしいー!」と叫んでわんわん泣くらいのものだったので進化できてうれしいわん。ごめん。でもちょう言いたかった。犬も喰わない昔話とダジャレにお付き合いいただきましてありがとうございました。

夏目漱石の文章に触れたい欲が高まり図書館で借りてきて再読。

こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

(...)しかし悪い人間と言う一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざというまぎわに、急に悪人にかわるんだから恐ろしいのです。だから油断できないんです。

これを、物語の中で体験することになる。悪人がどういうものか知りああはなるものかと固く心に誓ったのに、ある時突如現れた悪にあっという間に支配される。読者もまたその時ページをめくるスピードが速まりそれは共犯を意味する。とか。