小島慶子キラキラ・放送後記

引用元→http://www.tbsradio.jp/kirakira/ps/

6月17日(金)「いろんな奥さんの話」

放送後記


今週も有り難うございました。モテモテだった独身女子が、誰もが羨む彼氏とめでたく結婚して、セレブなパーティーをしましたとさ。さて、晴れて奥さんとなった彼女は、次にどうするでしょうか。モテるということは需要があるということ。人妻となった彼女は、それまで売れっ子として異性同性から注目を集めていた自分が、恋愛という市場から疎外されたことに気がつきます。もう、前と同じマーケットで勝者となることは出来ません。でも、彼女の自尊心は「誰もが欲しがる私」であることによって強固に支えられてきたのですから、なんとかして支持者を集めなくてはなりません。そこで始まるのが「シアワセな奥さんであることの証明」です。家庭の主婦である自分をことさらに価値ある生き方だと主張し「結婚したけど所帯じみていない私、結婚して愛されてシアワセだからきれいな私、なんでも手に入る豊かさを手に入れた私」を形にしようと必死になります。その前提は何でしょう。それは「結婚したら、沢山のものを失うのだ」という思い込みです。だから「でもわたしはそうではない」というメッセージを出し続けようとする。奥さんになっても、彼女にとって「もてる女が一番」という価値観は変わらず、恋愛レースに参加できなくなったら「もてた結果、シアワセである私」を証明し続けなくてはならない。彼女にとっての世間とは、今も昔も、同じ男を奪い合い、手にした男を比べ合う、同世代の女達です。ああ、ああ。自分が「求められる存在」でないと価値が無いという思い込みは何と不自由なことでしょう!それは自分が商品であると思い込むのと同じことです。それは、自分の夫も子どもも「誰もが欲しがる商品」でなくては気がすまないという生き方です。結婚はあなたを損なわない。結婚は人に勝つためにするものでもない。人を好きになって、一緒に生きようと思うことだけでいいじゃないか。もっと気を楽にしようよ、その方があなたは、きれいだよ。
・・・と、いうことを毎月、光文社『VERY』で書いております。気が向いたら是非、お読みください。
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小島慶子