恐怖を感じている時は、ちゃんと自分の頭で考える事が出来なくなる。ガーッと怒鳴られてから意見を求められると、頭の中が真っ白になってなんにも言葉が出てこない。とはいえ、相手を怒らせるような事をしなければいいだけのことなのだが。あーあ。



「実際やんなくても想像してみりゃいいじゃん」と慶喜君が言う。「なんでそんなすぐ難しいから分かんないとか言うんだよ」
「え、ごめん……」
「ごめんとか言ってほしいんじゃないの。なんですぐ謝んだよ。何も悪いことしてないっしょあんた」
「だって……」
「俺がちょっと怒ったぽいからだろ。だから俺の顔色見ながら謝られてもしょうがないし。それ反省生まねーじゃん、今度は俺怒らさないでおこうってだけでしょ、そっから出てくるの。そんなのいらねーって」
「うん。分かってる」
「ホントに分かってんのかよ」
「分かってるよ。だから怒んないでよ。怒られると、怖くてうまく考えられなくなるんだもん」
「怒ってないよ、別に」

好き好き大好き超愛してる//舞城王太郎